映画『浜の記憶』を記録する

映画『浜の記憶』がどのように企画・製作・公開されたかを、監督の大嶋拓が綴ります。うたかたの記憶を、とこしえに記録するために…

午前中、渡辺さんに、全キャスト決定の報告メールを送信。同時に、彼女の出演日は今月の25、27日でどうかと打診する。

宮崎さんにも、明日の顔合わせの件でメールと電話。彼女の衣裳合わせも同時に行うことにしていたのだが、夏物をあるだけ持ってきてもらうのも大変である。事前にある程度絞り込みができれば、ということで、こちらで大まかなイメージを伝え、それに合ったものを宮崎さんが選び、写真に撮って送ってもらうことにする。待つこと数時間、衣裳やバッグ、靴などの画像が大量に送られてくる。しかもすべてナンバリング付き。こういうのは実にありがたい。

20180910

20180909

午前中、昨日両面コピーを取ったものをホチキス閉じし、両面テープで表紙をつけて、決定稿を7部作成。表紙色は、海と空をイメージしたスカイブルー。奇しくも、加藤さんと宮崎さんの大好きな色でもあった(と後日判明)。

14時、長谷駅で加藤さんと待ち合わせ。駅前の喫茶店Cafe Luontoで、ヒロインが正式に決まったことなどを報告し、俳優名が刷り込まれた決定稿を渡す。それをめくった加藤さん、レイアウトなどを見て、「本格的だねえ」と言いつつ嬉しそうな様子。

さて、『浜の記憶』は全部で24シーンあり、登場人物と場面、出来事は以下のとおりである。これ以降の(撮影中の)日記には、どうしても「シーン○○を撮った」「雨のためシーン△△は撮れなかった」などという記述が多くなるため、そのシーンがどういうものなのかご理解いただけるよう、一覧にしてみたわけである(まだ映画を見ていない方は、読まない方がいいかも…)。
浜の記憶

繁田和夫(93)鎌倉・長谷に住む老漁師
波川由希(20)カメラマン志望の娘
繁田智子(49)繁田の一人娘で教師(繁田とは非同居)

1 長谷の海岸(朝) 繁田、地引き網漁に出る。結果は大漁
1A 長谷の海岸 休んでいる繁田に、写真の勉強をしているという由希が声をかけてくる
2 繁田家・水場 繁田が魚をさばく(欠番)
3 繁田家・ダイニング 繁田と智子の日常風景。智子、そそくさと帰る。素っ気ない親子関係
4 長谷の海岸 船にいた繁田に由希がふたたび声をかけ、写真を撮る
4A 長谷の海岸 浜を歩く繁田と由希。繁田、熱中症で倒れる
5 繁田家の前 由希、繁田に肩を貸して家の中へ
6 繁田家・和室 由希、繁田を介抱する。眠りに落ちる繁田
7 神社(夜) 宵宮、お囃子が響く
8 繁田家・和室(深夜) 繁田、目を覚ますと部屋の隅で由希が寝ている
9 繁田家・ダイニング(翌朝) 繁田、回復しており、由希と朝食を取る
10 神社 繁田と由希、お祭りを見物
11 長谷の海岸 由希、海で泳ぐ。沖まで泳いでいった由希の無謀さを繁田がとがめる
12 繁田家・和室 シャワー後の由希、繁田の前であっけらかんと着替える。とまどう繁田
13 江ノ電・駅(夕) 由希を見送る繁田「また来て欲しいんだ」
14 走る江ノ電(夕) 車内の由希
15 長谷の海岸(夕) 物思う繁田
16 長谷周辺の寺・神社 散策を楽しむ繁田と由希
17 ある寺 境内で話す繁田と由希
18 長谷の海岸 繁田の写真を撮る由希。そこに智子が現れる
19 ゲストハウス・外(夕) 翌日の再会を約して別れる繁田と由希
20 繁田家・ダイニング(夜) 智子、繁田に由希のことを問い詰めるが繁田はシラを切る
21 ゲストハウス・ラウンジ(夜) 智子、由希を訪ねてくる。「お話しがある」と智子
22 道(夜) 繁田家に向かう智子と由希。智子、繁田への不信を口にする
22A 繁田家の前(夜) 由希を家に入れる智子。「父はもう寝てるから」
23 繁田家・和室(夜) 智子、由希に真意を問う。長いやりとり
24 長谷の海岸(翌日) 待っている繁田。やってくる由希。そして…

午前中、決定稿をプリントアウトし、セブンイレブンで両面コピーを取る。

16:45、横浜シネマリンに、渡辺梓さん主演の『ああ栄冠は君に輝く』を観に行く。終映後には、渡辺さんと稲塚秀孝監督の舞台挨拶もあり、会場は満員で補助椅子まで出る盛況ぶり。帰り、渡辺さんに一瞬ご挨拶。
「こっちも、やっといろいろ見えてきましたので、また連絡します」
とお伝えする。その帰り道、宮崎さんに電話し、正式に由希役をお願いしたいと伝える。

10人の候補者との面談を振り返り、やはり宮崎さんに勝る人材はいないことを再確認。最近の若い女性は、容姿は整っているけれど、今ひとつ内面が見えないというか、心のぬくもりを感じさせない人が多いような気がする(個人の感想です)。

それに対して、宮崎さんはわりと牧歌的というか、その時々の心の動きが自然に透けて見える感じで、表情も話し方もほんわかしていて、実際に一緒にいたら気持ちがなごむだろうなあ、と思わせるタイプ。今回のヒロインには、そういう人こそがふさわしいし、加藤さんとの相性もいいような気がする。ヘアスタイルについては、本人が、
「私、のびるのメッチャ早いんで」
と言っていたので、その言葉を信じるしかないだろう。また、内田さんは面接の後で、
「ロングヘアだと、女の色気で繁田をたぶらかす、みたいな感じになる恐れもあるし、むしろショートで正解じゃないでしょうか」
と言っていたが、それももっともな話である。

というわけで、由希役は宮崎さんでいくことにする。それにともない、シナリオの由希のセリフを少し修正、決定稿とする。また、メインタイトルを「浜辺にて」から「浜の記憶」に変更。

登場人物ページも作成。加藤茂雄、宮崎勇希、渡辺梓の3人の名前を打ち込む。

20180907

20180906

オーディション2日目。場所は前回と同じ雑居ビルの一室。内田さんが前日に確認電話を入れた甲斐あって、今回はしっかり全員が参加。こうでなくっちゃね。

2日目だけあってこちらも段取りが頭に入り、てきぱきとテンポよくこなせるようになるが、その分いささか流れ作業的になってしまったことも否めない。その辺が実に難しいところである。

とにかく、2日かけてオーディションはすべて終了。帰りは内田さんと近くの大戸屋で夕食。彼女はとにかく食べるのが早い。いろいろな現場で鍛えられているのを感じる(でも、あんまり早食いすると、血糖値が急に上がるから、体にはよくないんだけどね)。

↑このページのトップヘ