映画『浜の記憶』を記録する

映画『浜の記憶』がどのように企画・製作・公開されたかを、監督の大嶋拓が綴ります。うたかたの記憶を、とこしえに記録するために…

ジャック&ベティの梶原支配人から、
「渡辺梓さんと電話でお話できました。企画概要や撮影時期等を、一度メールでお送りください」
との返事が来たので、早速渡辺さんにメールを打ち、企画書とともに送る。

午後は新宿に出て、ヨドバシカメラでヒロイン・由希が使う一眼レフカメラのストラップを物色。カメラはニコンのブラックボディなので、それに合わせて、ロゴなど一切入っていない渋めのものを選ぶ。
ちなみにこの年代物のフィルムカメラは、加藤さんの後輩にあたる鎌倉アカデミア演劇科2期生・木口和夫さん(2007年病没)の遺品。数年前にご遺族からいただいたものだ。最近はもっぱらデジタルカメラで、実際に使うことはなかったのだが、まさかこんな形でふたたび陽の目を見ることになろうとは。

20180718

夏風邪を引いてしまい、体調は今いちだったが、うす曇りということもあり、長谷の石上神社(御霊神社の分社)のお祭り(御供流し)の模様を撮りに行く。
そうしたら13時の祭り開始とともに太陽が出てきて大変な暑さになり、ヘロヘロ状態でカメラを回す。

20180716

昨年の秋、『鎌倉アカデミア 青の時代』の公開でお世話になった横浜の映画館・シネマ ジャック&ベティの梶原俊幸支配人に電話。
「渡辺梓さんに出演交渉をしたいので、間に入っていただけませんか」
とお願いする。少し前まで、渡辺梓さんがご主人の稲吉稔さんと主宰する「似て非works」の本拠地はジャック&ベティのすぐ近くにあり、懇意にされていたというのを人づてに聞いていたのだ。まずは作品の概要を知りたいとのことだったので、メールで企画書を送る。

J&B

加藤さん演じる繁田のひとり娘・智子役(40代後半)をどうするか、あれこれ思案する。

加藤さんは大ベテランではあるが、東宝専属時代はいわゆる大部屋俳優でその後も脇役専門、一部の映画通以外にはなじみが薄い。そして、相手役の由希も、新人の登用を予定しているので、このままだと、まったくネームバリューのないキャスティングになってしまう。まあ今回はそれでもいいのかも知れないが、やはり、正式な公開を視野に入れるなら、1人くらいは名前の通った俳優を起用するべきではないのか。そうなると智子役には、無名ではなく、それなりにキャリアのある演者を選ぶことが不可欠になるのだが…。

プロデューサー的な発想でそんなことを考えつつネットサーフィンをするうち、渡辺梓さんの名前を発見。渡辺さんといえば、私より6歳年下だが、1989年(平成元年)にNHK連続テレビ小説「和っこの金メダル」のヒロインとしてデビューしたころから気になっていた女優さんで、2000年代に入ってから「魔法戦隊マジレンジャー」で5兄弟戦士の母親役(マジマザー)を演じたのも記憶に新しいところ。所属事務所は、舞台関係は無名塾だが、映像に関しては現在フリー。これはつまり、仕事はすべてご本人が選んでいることを意味する。心意気で交渉してみる余地はあるのではないか。

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強く美しく凛々しいマジマザー(C)東映/テレビ朝日

昨日プリントアウトした準備稿をレターパックライトで加藤さんに送る。その件で加藤さんに電話したところ、撮影に使う家の話になり、先日話が出たTさんの了承が取れたらしいというので、ご本人に電話をし、15時、早速材木座にあるお宅を見に行く。

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場所は光明寺のすぐ近く。1930年代に建てられたそうで、築80年以上とのことだが、かなり内装に手を入れているのでそうは見えない。しかしいささか広すぎる感じもしたので、その隣りにある、少し小さめの別宅(現在は、Tさんの甥に当たるSさんという方が住んでいるとのこと)をお借りすることで話がまとまる。メインのロケ場所が決まると、一気に話が具体的になる感じ。ただ、加藤さん演じる老漁師がひとりで暮らしているという設定にしては、少々きれい過ぎるような気も…。

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