映画『浜の記憶』を記録する

映画『浜の記憶』がどのように企画・製作・公開されたかを、監督の大嶋拓が綴ります。うたかたの記憶を、とこしえに記録するために…

2018年07月

13時、由比ガ浜の紅茶専門店「香山」にて、加藤さんとともにドライカレーを食べて、ピアノのミニコンサートを聴く。このお店のオーナーの津田宏さんは、加藤さんと同じ「長四郎網」のメンバー。帰りがけ、
「撮影でお店をお借りすることは可能でしょうか?」
とご相談をし、快諾を得る。

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その後、加藤さん宅にて簡単な衣裳合わせと今後の相談。撮影スケジュールに関しては、やはり連日の猛暑が収まるまでは様子を見ることにする。実際、加藤さんは最近、浜辺で作業をしている時に熱中症になり、意識を失いかけて顔から砂地にぶっ倒れたという。シャレにならない話だが、そんな話でも加藤さんはなぜか楽しそうに笑顔で語るのである。

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加藤さん宅前に飾られた漁師風ディスプレイ

珍しく曇りがちで気温も低めだったため、10時すぎに家を出て、稲村ケ崎、極楽寺駅、坂ノ下海浜公園、光則寺などを見て歩く(江の島・鎌倉フリーパスを使って)。

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稲村ケ崎はごつい岩場の向こうに黒々とした砂浜が広がり、荒涼とした感じが漂う。大して離れていないのに、穏やかな長谷の海岸とはすいぶん趣が違うものである。ヒロイン・由希が海を泳ぐカットを高台から俯瞰で撮れないものか、などと考える。

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極楽寺は昔から映画やテレビなどでさんざん使われているので、今さらという感じもするが、やはり大変絵になる。

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加藤さんが昔セリフの練習に励んだという坂ノ下海浜公園は人も少なく、何かで使える感じ。

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光則寺。ここもまた穴場的なスポットで、長谷寺のすぐ近くなのに訪れる人もない。

という感じで、半日鎌倉を満喫。気温が30度以下なら、こうやって楽しむ余裕もできるのだが。

何度かのメールのやりとりの結果、条件(撮影2日、予備日1日)もまとまり、渡辺梓さんが正式に智子役に決定する。
「93歳の現役の役者であり漁師の加藤さんにとても興味があります。娘の智子、彼女を体験してみたいと思いました」
との文面に、こちらも身の引き締まる思い。

個人ブログに、最近のひどい暑さを嘆く文章をアップ。題して「人が死ぬ暑さ」。


ちょっとどうにかして欲しいんですけどホント。

連日、熱中症による死亡事故が報道されています。

この暑さ、まさに人殺しです。どうしてこういうことになるのか。天気予報では、太平洋高気圧は今月いっぱい居座るみたいなことを平然と言ってますけど、もうすべてが異常な夏。

この夏のうちに、あるプロジェクトを前に進めたいのに、基本、海での撮影なんですよ、これが(泣)。

この間も、あるお祭りを撮影したんですが、焼けつく陽射しの下、滝のような汗が流れて止まらず、そのうち息も苦しくなってきて、マジで死ぬかと思いました。

命を賭してプロジェクトに邁進するのか、少し暑さが収まるまで様子を見るのか。

実に実に悩ましいところです。

「タクラマブログ:人が死ぬ暑さ」より


実際、このひどい暑さの中で撮影するのは、特に90過ぎの加藤さんにはヘビーすぎる。キャストが全員決まったとしても、暑さがひと段落するまで、撮影は延期した方がいいのかも知れない。

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ジャック&ベティの梶原支配人から、
「渡辺梓さんと電話でお話できました。企画概要や撮影時期等を、一度メールでお送りください」
との返事が来たので、早速渡辺さんにメールを打ち、企画書とともに送る。

午後は新宿に出て、ヨドバシカメラでヒロイン・由希が使う一眼レフカメラのストラップを物色。カメラはニコンのブラックボディなので、それに合わせて、ロゴなど一切入っていない渋めのものを選ぶ。
ちなみにこの年代物のフィルムカメラは、加藤さんの後輩にあたる鎌倉アカデミア演劇科2期生・木口和夫さん(2007年病没)の遺品。数年前にご遺族からいただいたものだ。最近はもっぱらデジタルカメラで、実際に使うことはなかったのだが、まさかこんな形でふたたび陽の目を見ることになろうとは。

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