映画『浜の記憶』を記録する

映画『浜の記憶』がどのように企画・製作・公開されたかを、監督の大嶋拓が綴ります。うたかたの記憶を、とこしえに記録するために…

カテゴリ: 撮影準備

朝8時すぎに起きて空を見ると、ぶ厚い雲が垂れ込めている。これじゃあしょうがないと、9時の時点で中止と判断、勇希ちゃんにその旨電話で伝える。しかし昼になるころには、空がかなり明るくなってくる。これだったら撮影できたじゃないか、と後悔することしきり(これ以降も、天気に関しては判断を誤ることが多かった)。

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午後から材木座と由比ガ浜の海岸に出向き、撮影ポイントの絞り込みを行う。しかし、鎌倉の海岸は材木座にしろ由比ガ浜にしろ、すでに海水浴場を閉じており、海に入るのは自己責任ということになる。俳優の安全を考えるなら、9月30日まで遊泳が可能な三浦海岸まで行って撮影するのが得策なのかも知れない。しかし、海岸の形が違うのは、見る人が見ればすぐわかってしまうし…。これもまた悩むところである。

帰り、長谷駅前の100円ショップで、浜辺で履くためのビーチサンダルを購入。9月中旬でもまだ販売しているのは、さすが海沿いの町といった感じ。

12時に宮崎さん、内田さんと鎌倉駅東口改札で合流。小町通りの居酒屋で昼食を取ったあと、13時に材木座のSさん宅へ。加藤さんはすでに来ていた。ついに、主演男女優の顔合わせが実現する。

※ここからは、現場でのニックネームで記載していきますのでご了承ください。宮崎さんは勇希ちゃん、内田さんはウッチーとなります。

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全員の紹介をしたあと、まずは通しで読み合わせ(本読み)。智子役はウッチーが担当。勇希ちゃんは嫌味のない安定したセリフ回しだが、まだ多少の緊張があるのか、いささか早口で声も控え目。対する加藤さんのセリフは、海で鍛えているせいだろう、勇ましく室内に反響し、とても93歳とは思えない。

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その後、勇希ちゃんの衣裳合わせ。これは昨日送ってもらった画像のおかげでスムーズに終了。同時に、加藤さんの「帽子合わせ」(衣裳合わせの帽子版)などもやるが、その際、加藤さんの髪が量も多くさらさらでキレイ、と女性陣の注目の的に。ご本人いわく、「何の手入れもしてないよ。フロに入った時に石鹸で洗うだけ」とのこと。

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 ↑加藤さんにあやかるべく、髪をなでる勇希ちゃんとウッチー。もはや「おびんずるさん」状態。

日没までまだ時間があったので、一同、歩いて数分の材木座海岸へ。海の家の撤去作業が行われており、いよいよ夏の終わりを感じさせるが、われわれ「浜の記憶」組の夏はこれからが本番なのだ。

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砂浜を歩きつつ、加藤さんは勇希ちゃんに、地元の漁師の生活や、近くにある和賀江島の成り立ちなどを話して聞かせ、勇希ちゃんは熱心に耳を傾ける。

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2人の呼吸が揃ってくるのがはたで見ていてもわかった。そうしているうち、曇っていた空が少し明るくなり、西の彼方に江の島が姿を現した。

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「あれが江の島だよ」
と加藤さんに言われ、目を輝かせる勇希ちゃん。そのまんま映画の1シーンのようだ。

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Sさん宅に戻って、もう一度本読みに挑戦。海辺の散歩が功を奏したか、勇希ちゃんのセリフは先ほどよりもずっと生き生きした感じになる。

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18時、すべて順調に終了。と言いたいところだが、実は、勇希ちゃんは以前持っていた水着を処分してしまったとのことで、水着の衣裳合わせだけがすんでいない。そこで、新規に購入することにし、帰り道に横須賀線で鎌倉から横浜に出て、ルミネの三愛(水着専門店)に寄る。売り場で商品をあれこれ物色し、3点ほどピックアップしてフィッティングした末、「由希ならこんなのを着るんじゃないか」という感じの、ややレトロなデザインのビキニを購入。インナーショーツと合わせ、16,000円也(三愛の水着は割と高いのだ)。オンシーズン(7、8月)であれば、ルミネ内のアパレルショップでもう少し安価なものを扱っていたらしいのだが…。しかし、どうにか必要なものが揃ってひと安心。

すでに19時をだいぶ過ぎていたので、ルミネの飲食店で夕食を取りつつ、これからの撮影スケジュールの打ち合わせ。
まずは本日購入の水着を使って、海水浴のシーンを撮ることにする。とにかく季節は秋に向かって一直線なので、少しでも気温が高いうちに終わらせてしまおうというわけ。太陽狙いで、晴れたらそのシーンを最優先で撮ることにし、勇希ちゃんには13、14、15、16日と体をあけておいてもらう。いくら9月に入ってから気候不順が続いていると言っても、4日あれば1日くらいは晴れるだろう(と、その時は楽観視していたのだが…)。

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午前中、渡辺さんに、全キャスト決定の報告メールを送信。同時に、彼女の出演日は今月の25、27日でどうかと打診する。

宮崎さんにも、明日の顔合わせの件でメールと電話。彼女の衣裳合わせも同時に行うことにしていたのだが、夏物をあるだけ持ってきてもらうのも大変である。事前にある程度絞り込みができれば、ということで、こちらで大まかなイメージを伝え、それに合ったものを宮崎さんが選び、写真に撮って送ってもらうことにする。待つこと数時間、衣裳やバッグ、靴などの画像が大量に送られてくる。しかもすべてナンバリング付き。こういうのは実にありがたい。

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午前中、昨日両面コピーを取ったものをホチキス閉じし、両面テープで表紙をつけて、決定稿を7部作成。表紙色は、海と空をイメージしたスカイブルー。奇しくも、加藤さんと宮崎さんの大好きな色でもあった(と後日判明)。

14時、長谷駅で加藤さんと待ち合わせ。駅前の喫茶店Cafe Luontoで、ヒロインが正式に決まったことなどを報告し、俳優名が刷り込まれた決定稿を渡す。それをめくった加藤さん、レイアウトなどを見て、「本格的だねえ」と言いつつ嬉しそうな様子。

さて、『浜の記憶』は全部で24シーンあり、登場人物と場面、出来事は以下のとおりである。これ以降の(撮影中の)日記には、どうしても「シーン○○を撮った」「雨のためシーン△△は撮れなかった」などという記述が多くなるため、そのシーンがどういうものなのかご理解いただけるよう、一覧にしてみたわけである(まだ映画を見ていない方は、読まない方がいいかも…)。
浜の記憶

繁田和夫(93)鎌倉・長谷に住む老漁師
波川由希(20)カメラマン志望の娘
繁田智子(49)繁田の一人娘で教師(繁田とは非同居)

1 長谷の海岸(朝) 繁田、地引き網漁に出る。結果は大漁
1A 長谷の海岸 休んでいる繁田に、写真の勉強をしているという由希が声をかけてくる
2 繁田家・水場 繁田が魚をさばく(欠番)
3 繁田家・ダイニング 繁田と智子の日常風景。智子、そそくさと帰る。素っ気ない親子関係
4 長谷の海岸 船にいた繁田に由希がふたたび声をかけ、写真を撮る
4A 長谷の海岸 浜を歩く繁田と由希。繁田、熱中症で倒れる
5 繁田家の前 由希、繁田に肩を貸して家の中へ
6 繁田家・和室 由希、繁田を介抱する。眠りに落ちる繁田
7 神社(夜) 宵宮、お囃子が響く
8 繁田家・和室(深夜) 繁田、目を覚ますと部屋の隅で由希が寝ている
9 繁田家・ダイニング(翌朝) 繁田、回復しており、由希と朝食を取る
10 神社 繁田と由希、お祭りを見物
11 長谷の海岸 由希、海で泳ぐ。沖まで泳いでいった由希の無謀さを繁田がとがめる
12 繁田家・和室 シャワー後の由希、繁田の前であっけらかんと着替える。とまどう繁田
13 江ノ電・駅(夕) 由希を見送る繁田「また来て欲しいんだ」
14 走る江ノ電(夕) 車内の由希
15 長谷の海岸(夕) 物思う繁田
16 長谷周辺の寺・神社 散策を楽しむ繁田と由希
17 ある寺 境内で話す繁田と由希
18 長谷の海岸 繁田の写真を撮る由希。そこに智子が現れる
19 ゲストハウス・外(夕) 翌日の再会を約して別れる繁田と由希
20 繁田家・ダイニング(夜) 智子、繁田に由希のことを問い詰めるが繁田はシラを切る
21 ゲストハウス・ラウンジ(夜) 智子、由希を訪ねてくる。「お話しがある」と智子
22 道(夜) 繁田家に向かう智子と由希。智子、繁田への不信を口にする
22A 繁田家の前(夜) 由希を家に入れる智子。「父はもう寝てるから」
23 繁田家・和室(夜) 智子、由希に真意を問う。長いやりとり
24 長谷の海岸(翌日) 待っている繁田。やってくる由希。そして…

午前中、決定稿をプリントアウトし、セブンイレブンで両面コピーを取る。

16:45、横浜シネマリンに、渡辺梓さん主演の『ああ栄冠は君に輝く』を観に行く。終映後には、渡辺さんと稲塚秀孝監督の舞台挨拶もあり、会場は満員で補助椅子まで出る盛況ぶり。帰り、渡辺さんに一瞬ご挨拶。
「こっちも、やっといろいろ見えてきましたので、また連絡します」
とお伝えする。その帰り道、宮崎さんに電話し、正式に由希役をお願いしたいと伝える。

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